【書評】海外経験ゼロでも仕事が忙しくても「英語は1年」でマスターできる ~孫正義氏の元秘書による英語勉強法


ソフトバンク孫正義社長の元秘書・三木雄信(みき たけのぶ)さんが、超多忙な日々の中で編み出した英語勉強法をまとめた『海外経験ゼロでも仕事が忙しくても「英語は1年」でマスターできる』。非常に実践的な良書だったので、ご紹介したいと思います。

海外経験ゼロでも仕事が忙しくても「英語は1年」でマスターできる 三木雄信(著) ※ 三木さんは、本書以外にも『孫正義名語録』などのビジネス書を多数出版されてます。

【Amazonの内容紹介】 より

学生時代、英会話が大の苦手だったという著者。ところが、ソフトバンクに転職するやいなや、孫正義社長の秘書として海外出張への同行を命じられ、そこで英語ができないことがものの見事に露呈してしまう。

唖然とする孫社長の表情を見て、「このままではクビになる」と感じた著者は一念発起し、「流暢に話せるわけではないのに、ネイティブとの交渉で絶対負けない」孫社長の英語を参考に勉強をスタート。

その後、仕事に必要な英語だけを集中的に学習する独自のやり方で、「通訳なしで交渉ができるレベル」の英語をわずか1年でマスターした(しかも、孫正義社長の下で忙しく働きながら)。
本書では、自らの実体験をもとに編み出した「最短最速の英語勉強法」を開陳。著者の勉強法は、一見ユニークだが、誰もが実践できるもの。英語学習に対する「不安」が「希望」に変わる1冊。

■ 1年でマスターするための「7つの戦略」
【戦略1】 「自分に必要なのはどんな英語か」をまず明確にする
【戦略2】 スピーキングとヒアリングを集中的に鍛える
【戦略3】 単語は勉強しない
【戦略4】 言いたいこと一つにつき、覚える言い回しは一つだけ
【戦略5】 文法も勉強しない
【戦略6】 日常会話やスモールトークは後回し
【戦略7】 発音はあきらめる

・・・内容を一言でまとめると、

「超目的思考」で無駄な事をしなければ、英語は1年でマスターできる!

という感じです。著者が目指したレベルは「通訳なしで交渉ができるレベル」で、見事1年で達成。その為に「やったこと」「やらなかったこと」が、具体的に明かされています。

私はビジネス英語とは次のようなものだと理解しました。

1.流暢に話せる必要はない
2.限られた表現を覚えればいい

これなら英語が苦手な自分でもできるかもしれない──。(はじめにより)

私が一年で英語を使えるようになったのは、「目的につながらない学習は捨てる」と割り切ったからこそだと思います。(第1章より)

という言葉もありますが、自分の英語学習目的を明確にして、戦略的に何をやるか決める。流暢な発音や、豊富な語彙習得などはバッサリ捨てる。など、思い切った勉強法が紹介されています。また、意志の力を振り絞らなくてよいように、「学習を仕組み化する」方法など、いろいろと役立つ記述が多いです。

本書は、目次の構成が非常に分かりやすく内容も分かりやすいので、Amazonのなか身検索でぜひチェックしてみて下さい。「社会人の英語学習における七つの間違い」・「モチベーション維持と習慣化のコツ(七つの戦術)」などの概要も見れます。

流暢に話せる必要はない

「孫社長が話す英語も決して流暢ではなかった」として、第1章でこちらのYouTube動画が紹介されています。

動画を観ると日本語なまりのある英語で、決して上手いとは言えませんよね。では、通訳を付ければ良いのか? と言うと、そうではないそうで、交渉にも同席した著者は、孫社長がiPhone独占販売などの数々の業績をあげているのは、「自分の言葉で熱意を持って交渉にあたったのが大きい」として、大事なビジネス交渉でも「通訳はつけない。下手でもいいので自分の英語で話す」ことを推奨されています。

スピーキングの上達法も多数紹介されてますが、スピーキングの効果測定ができるテストとしては、VERSANT(ヴァーサント)が紹介されています。

Versant(ヴァーサント) 英語コミュニケーション力測定テストhttp://www.versant.jp/

Versantは、英語を社内公用語化した楽天が採用して話題になりましたね。

たくさんの語彙も必要ない

語彙についての説明では、代表的な英英辞典のひとつ「Oxford Advanced Learner’s Dictionary」(オックスフォード現代英英辞典 18万4500語収録)が取り上げられてました。(下記は、WEB版)

Oxford Advanced Learner's Dictionaryhttp://www.oxfordlearnersdictionaries.com/

こちらの有名辞書。単語を解説する文章は、すべて「Oxford 3000」 という基本的な3000語だけで書かれているとの事。たしかに、3,000語でどんな語句も説明できるのであれば「たくさんの語彙を覚えるも必要ない」という言葉にも説得力がありました。

まぁ、TOEICや英検を受ける方は単語を覚えない訳にはいきませんが・・・。

思い切って、「必要なコミュニケーションがとれればOK」と開き直ってみて下さい。
その開き直りが、「使える英語」を一年で身につけるための第一歩なのです。(第1章より)

戦略02 スピーキングとヒアリングを集中的に鍛える(第2章より)

「手を抜けるとこは手を抜いて、やるべきことはみっちりやる」ことを推奨する本書では、便利なツールなども紹介されています。例えば、ライティングに関しては「英文添削サービスのジンジャー」がオススメされています。

Ginger 英文チェッカーhttp://www.getginger.jp/

スペルや文法のミスはもちろん、文脈に合わないおかしな表現も添削してくれて、確かに便利そうです。

・・・他にも「英会話スクール選びのコツ」「明日の仕事を乗り切る一夜漬け勉強法」などがいろいろ紹介されていて、きっと参考になるやり方が見つかると思います。「これは取り入れよう」「これはちょっと自分には合わない」という感じで、「自分に合ったものだけ部分的に取り入れる」のが良いと感じました。

「英語は楽々マスターできる」というような甘い内容ではなく、「的を絞って、1年限定で英語学習を頑張ろう!」という感じの本書ですが、なるほど「たしかに、これなら1年でマスターできそう!」と希望を感じられる内容。特に、忙しいビジネスマンの方で、本気で英語を身につけたい方に、オススメしたい良書です。

最後に、本書や英語とは直接関係がないですが、最近出たビジネス書で素晴らしい本があったのでご紹介。ビジネス書をこれまで1,000冊以上読んできた管理人も選考に加わっているビジネス書大賞。2015年のノミネート8作にも選出されている『エッセンシャル思考』が、秀逸の出来になってます。

エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする

最少の時間で成果を最大にするメソッドが満載の『エッセンシャル思考』を読むことで、「超目的思考」の『海外経験ゼロでも仕事が忙しくても「英語は1年」でマスターできる』の内容も深く理解できると思いますよ。合わせて読むことをオススメします!

それではまた。[更新No.013] 2015/03/15